私たちのものづくり #7 日本では栽培が難しいと言われていたグレープフルーツづくりにかける想い
国内流通1%未満! 希少な国産グレープフルーツ
ハンデルスベーゲンがお届けする2022年夏の期間限定フレーバーのひとつ「宮崎グレープフルーツソルベ」。
その原料となっているのが、宮崎県日南市の柑橘農家「緑の里りょうくん」で作られている純国産グレープフルーツです。国内産のグレープフルーツはなんと国内で流通するグレープフルーツの1%未満。かつて日本では花が咲かないと言われ、栽培が難しいとされていたグレープフルーツですが、「緑の里りょうくん」では2010年より栽培に着手。温暖化の影響もあってかしっかり花が咲くようになり、今では年間約35tものグレープフルーツを出荷しています。
そんな「緑の里りょうくん」の純国産グレープフルーツとハンデルスベーゲンとの出会いについて、ブランド責任者の中野さんはこう話します。
「今年の春からハンデルスベーゲンのアイスクリームを取り扱っていただいている、京都のGOOD NATURE STATIONの担当の方とお話している時に、『すごく美味しい国産のグレープフルーツがあるんだけど、コロナの影響もあり少し余っていて。これを使って何か作れませんか?』と声をかけていただいたんです。『国産のグレープフルーツ???』と思いながらさっそくいただいて食べてみたところ、これまで味わったことのない果汁感と、酸味と甘みのバランスに驚かされました。『なんて “感じが良い“ グレープフルーツなんだ!』と思い、この夏の限定フレーバーへの採用をその場で即決したんです」
その時感じた「感じの良さ」の秘密は何なのか?そもそも国産のグレープフルーツとはどうやって作られているのか?を確かめに、宮崎県日南市の「緑の里りょうくん」代表取締役社長・田中良一さんを訪ね、グレープフルーツを生産することになったきっかけや、つくり手の想いなどのお話をお聞きしてきました。
農業生産法人 有限会社緑の里りょうくん
代表取締役社長 田中良一
1954年1月、宮崎県日南市の100年以上続く柑橘農家に生まれる。高校を卒業後、玉川大学農学部へ進学。卒業後は地元に戻り家業を継ぐ。かつては温州みかんの一大産地として栄えていたものの、過疎化や後継者不足などを理由に地域が衰退していくことを目の当たりにし、地域のみんなで「産地づくり」に取り組み、2010年よりグレープフルーツの生産を開始。「見た目の美しさと美味しさは比例しない」というポリシーのもと、持続可能な農業を展開している。
太陽を浴びて育つ国産グレープフルーツ
国内で流通しているグレープフルーツの99%以上は南アフリカやアメリカといった海外で生産されたもの。というのも、近年まで日本ではグレープフルーツの生産は難しいとされ、そもそも栽培を試みる農家さん自体がほとんどいなかった、という背景があります。
そのような状況で田中さんがグレープフルーツを作りたいと思ったきっかけは、飽和する柑橘市場に新しい風を吹かせたかったから。国内においてグレープフルーツはあまり前例を見ない領域なので、頑張って成功させれば他の産地との差別化を図れると考えたそうです。
「私より前の世代の人たちは、専門家であればあるほど、国内ではグレープフルーツの花は咲かないと言っていました。ですが、根っからの天邪鬼で凝り性の私は、《何か手はないか?》としつこく試行錯誤を繰り返していたのですが、ある時、突破口が見つかったんです。
私たちは長年、温州みかんなどの柑橘類を育ててきた農家でしたが、みかんの味を向上させるため、近年はマルチ栽培という手法を取り入れています。マルチ栽培とは、農園内に水分を通しにくいマルチシートを敷き、地中の水分を外に逃し、濃縮効果によって糖度を上げるという手法なのですが、このマルチ栽培の手法をグレープフルーツにも応用させました。そして温暖化の影響もあって、グレープフルーツの花を咲かせることができるようになったのです。」
と、田中さん。現在では農園の約3割がグレープフルーツ畑に。年間約35tの出荷量となっており、国内でもトップクラスの生産量を誇るまでになりました。
見た目の美しさと美味しさは比例しない
従来、農家は市場に評価される “見た目が美しい商品” をつくるため、害虫などで傷が付いたり、病気にならないよう様々な農薬を使用するなど、たっぷりと手間暇をかけて “見た目の美しさ” を追求してきました。一方、キズものやサイズの問題などで、青果として出荷できない果実は、どれだけ味が良くても「規格外品」として値引対象で販売する、または廃棄という方法を取るしかありませんでした。そうなると土壌を含めた環境的にも、人的・経営的にも農家として事業を継続することはとても困難になってしまいます。
「でも本当はミツバチなんかがたくさん寄ってきた結果、表面に傷が付いているようなものこそが美味しいんですよ。虫たちは純粋に香りや甘さが濃厚なものに寄ってきますから。」
その状況を打開したいと考えた田中さんたちは、「見た目の美しさと美味しさは比例しない」というポリシーのもと、『持続可能(サステナビリティ)』な柑橘農家としての展望を図るため、農薬の節制や見た目の美しさのための手間を減らすことに取り組むと同時に、「規格外品」を加工して販売できる体制作りに着手しました。
「現在、農薬は必要最低限しか使用せず、収穫の半年以上前からは農薬を使っていません。また、青果としてそのまま販売できない “規格外品” のものをジュースやピール、香料など様々な加工商品にして、展示会や商談会に積極的に参加しています。」
農薬を減らす目的を達成するためには、加工品の販路を広げる努力をセットで行う必要があり、田中さんたちは、これらの活動を戦略的に行ってきたのです。現在、青果として出荷する商品は全体の約15〜20%。残りは冷凍果汁や冷凍果皮に加工し、飲料メーカーや酒類メーカーなどに出荷されています。
産地をつくるという想い
「緑の里りょうくん」がある地域は、かつて柑橘類の一大産地でした。46年前、大学を卒業した田中さんが戻ってきたときは、もっとたくさんの農家がいたといいます。けれど、近年は高齢化や後継者不足を理由に地元を離れる人も増加。地域の活気は失われつつありました。
そこで田中さんたちは、先人から受け継いだ豊かな農地、恵まれた自然環境を活かし継続していくために、2010年より国産グレープフルーツの栽培をスタートさせた後、2016年には地域の柑橘農家9名と手を組み、農業団体「りょうくんとその仲間たち」を立ち上げたのです。グレープフルーツをはじめとした柑橘栽培のノウハウを共有し、「緑の里りょうくん」で販売を一元化する体制を整備。地域のみんなで「産地づくり」に取り組んでいます。
img src="https://d2w53g1q050m78.cloudfront.net/wwwhandelsvagenc/uploads/news/our7_6.jpg" alt="産地をつくるという想い" />圧倒的な果汁感と、酸味と甘みのバランス
「本当に美味しいものを、持続的に作っていきたい」そんな想いで作られている田中さんたちの作る純国産のグレープフルーツ。何といってもその圧倒的な果汁感と甘みと酸味のバランスが特徴です。
「外国産のグレープフルーツは船便で時間をかけて輸入・保管・出荷されるため、その間にどうしてもある程度水分が飛んでしまい果汁が減ってしまいます。ですが、私たちが生産するグレープフルーツは、樹上で完熟させたものを短い輸送時間で出荷していますので、外国産とは異なる圧倒的な果汁感を感じることができると思います。中野さんが初めて食べた時に “感じが良い”と感じたのは、“水分量が多い” ということだったんじゃないですかね?」
事実、この国産グレープフルーツを絞ると、ものすごい量の果汁が出てきてびっくりする程。そのまま飲んでもちょうど良い甘みや酸味を感じることができ、まさに天然の「グレープフルーツジュース」そのもの。外国産のものは、輸送期間に水分が飛んでしまった結果、味が凝縮されてしまっているので、そのまま飲むにはちょっと強すぎてしまうのに比べると、そのままで「感じが良かった」というわけです。
「この『感じの良さ』をそのままお客様にお届けするためには、何も足し引きせずにソルベを作るべきだと感じ、実際、果汁100に対してたった1の水と、お砂糖、固めるためのゼラチンを加えただけで、ほかには何も足していません。こんなことができるのは国産のグレープフルーツならでは、ということですね。」と中野さん。
「美味しいですね。うちのグレープフルーツの味そのまま(笑)」と、田中さんにも太鼓判を押していただきました。
地元宮崎の神話に登場する農耕の神様にあやかり「月夜実」と名付けられたグレープフルーツ。ただ美味しいだけではなく、環境や産業全体までを視野に入れて考える田中さんたちだからこそ作れる「感じの良い」グレープフルーツです。
ハンデルスベーゲンの2023夏フレーバー「宮崎グレープフルーツソルベ」では、その感じの良さをそのままお届けできる果汁感たっぷりのソルベに仕上げています。ぜひ、この夏限定の想いの詰まったフレーバーを存分にお楽しみください。